50年後、子供や孫たちにもこれらの生物と地球上で一緒に生活してもらいたいと思いませんか?
現在、世界の1/3以上の両生類は絶滅危惧種に指定されています。今、地球温暖化による急激な環境変化が、さらにその速度を加速させています。日本両棲類研究所は、自然保護運動発祥の地として、自然保護、環境保全を推進し、発生学、再生学の研究で人工繁殖、人工孵化により種の保存を行っています。そして環境アセスメントを通じて、これらの生物が生き延びられる環境を提供する事業を行っています。 日本両棲類研究所では、所長・篠崎尚史が世界で初めてヒト体性幹細胞(ステムセル)を発見した実績※1や、長年にわたる自然保護活動の経験をもとに、発生学や再生医学の分野で最先端の研究を進めています。両棲類の持つ卓越した再生能力に着目し、四肢や臓器、中枢神経まで再生するメカニズムの解明を目指すとともに、奥日光の自然環境を守るための具体的な保護活動から得た知見を元に、全国の環境アセスメントや開発に伴う環境保全活動へのコンサルティング事業にも力を入れています。また、日光市に震源し環境省脱炭素先行地域にも指定され、奥日光地域づくり住民協議会を設置、事務局長並びに、環境・エネルギー部会長として、地熱発電や再エネ拡充のための調査、研究、導入の支援を行っております。このように、基礎研究と環境保全を両輪とし、生命の仕組みと自然との共生を追求しています。
発生学・再生学研究
両生類は、その進化の中で初めて四肢を得て上陸した脊椎動物です。幼生期にその多くは外鰓(がいさい)があり、水中生活をしますが、変態して上陸する事から両生類の名が付きました。 更に興味深いのは、3億6千万年程前に発生したこれらの種の多くが、非類なる再生能力を有している事です。日本固有の種であるアカハライモリでは、四肢や尾以外にも、臓器や中枢神経系の組織まで再生する事です。




これらの再生学研究は、両生類のみでなく人類に対しての再生医療として当研究所では世界初となり体性幹細胞(Body stem cell)を発見し、角膜移植で従来の移植では治せなかった重篤な症状で失明した方に、角膜輪部のステムセルを移植して角膜を再生させる「角膜輪舞移植」に成功、東京歯科大学市川総合病院に「角膜センター」を設立して、当研究所長がセンター長となり8千名を超える角膜移植を行いました。また、ステムセル探索は、肝臓、腎臓、脳と多岐に渡り、腎臓の幹細胞の採取、培養、治療の特許を取得して大学との共同研究を行っております。イモリの脳の再生研究では、脳性小児麻痺の子どもに自身の骨髄細胞から脳の細胞の原基を作り治療に活かしています。今後も、再生医療の分野では、当研究所が行っている自然に存在する我々の細胞をそのまま活かし、遺伝子操作などを行わない方法での再生医療研究をポリシーに安全性の高い治療法の確立に向けて研究を進めて参ります。
自然保護活動
日光は尾瀬沼のダム化に反対した運動から、我が国初となる「日光の自然を守る会」が設立され、第一回 全国自然保護大会も開催された地です。
日本両棲類研究所では、自然環境調査、環境アセスメントをはじめ、繁殖時の轢殺から個体を守るサンショウウオ横断トンネルの設置や、人工産卵池の設置等、特に奥日光における両生類の保護活動を行っています。

世界初、人工サンショウウオ産卵池
奥日光太郎山付近
砂防ダム建設により埋没した北関東最大のクロサンショウウオ産卵池群を保護するため、栃木県と取り組んだプロジェクト。帰巣本能の高いクロサンショウウオの本能を活かし、砂防ダムにより埋没する北関東最大の繁殖地横に、長さ9mのビオトープを設計、敷設しました。渇水時の対策として、中央部分が深さ2.4mのすり鉢状にして、幼生が変態後に脱出できるスロープにし、降雨によるオーバーフローを防止するため、一端にメッシュ管を埋設し砂利で濾過した水を満水前に放流できる構造となっています。そのため、大雨でもオタマジャクシが流出しない構造を考案しました。この設計はその後に、世界中のビオトープの基本概念を構築するものとなりました。秋に落ち葉の除去を行い、雪解けの際の環境整備を行っています。当研究所のサラマンダークラブ、日光アカデミークラブなどの会員の皆様には、これらの作業に参加して頂いております。

ハコネサンショウウオ横断トンネル
いろは坂
世界初、繁殖期の降雨時に華厳渓谷に移動するハコネサンショウウオが道路上で車に引き殺される(轢殺:れきさつ)状態を改善するため、いろは坂の国道に設置されたサンショウウオ専用の横断トンネル。山を下ってくるハコネサンショウウオを、降雨時の雨水を利用して側溝に流し込み揺り戻しを設計し個体に傷をつけず、更に側溝の車道側にはネズミ返し様の構造を施して道路側に登れない設計としました。
道路を横断するサンショウウオを保護するため、栃木県と取り組んだプロジェクトです。